急性冠症候群後の予後診断におけるプロカルシトニン(pct)の使用
专利摘要:
本発明の目的は、急性冠症候群(acute coronary syndrome)の患者をインビトロで予後診断する方法及びアッセイであり、ここで、該患者から取得した試料中のプロカルシトニン又はその断片のレベルが測定される。該プロカルシトニン又はその断片のレベルは、該急性冠症候群の有害転帰への素因と関連付けられ得る。 公开号:JP2011514971A 申请号:JP2010550105 申请日:2009-01-29 公开日:2011-05-12 发明作者:シュトルク,ヨアヒム;ベルグマン,アンドレアス;ローク ング,レオン 申请人:ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング; IPC主号:G01N33-53
专利说明:
[0001] 本発明の目的は、急性冠症候群(acute coronary syndrome)の患者をインビトロで予後診断する方法及びアッセイであり、ここで、該患者から取得した試料中のプロカルシトニン又はその断片のレベルが測定される。該プロカルシトニン又はその断片のレベルは、該急性冠症候群の有害転帰への素因と関連付けられ得る。] 背景技術 [0002] 急性冠症候群(ACS)は、心臓を侵す虚血疾患により引き起こされる、冠動脈不全のグループに属する。ACSの患者は統一性を欠き、病態生理学、臨床所見、及び有害事象のリスクにおいて様々である。医師は、そのような患者において、継続的な期間にわたり、不安定狭心症、非ST上昇非Q波心筋梗塞(NST−MI)、ST上昇非Q波MI、及び貫壁性(Q波)MIの症状を見出す。ACSは、1つ以上の冠動脈内の赤血球の沈着及び増殖に大部分が起因し、そして、その動脈の部分的又は完全な閉塞を引き起こし、そしてしばしば、プラーク(rupture)の破裂を伴い、虚血性傷害を引き起こす。また、ACSは、冠攣縮性狭心症(coronary vasospasm)、又は心筋の需要(myocardial demand)の増大によって引き起こされる場合もある。概要として、例えば、Davies, Clin. Cardiol. 20 (Supp. I): 12−17 (1997)を参照されたい。] [0003] ACSの深刻さは、虚血性傷害に続発する罹患及び死亡により強調される。例えば、ACSが4〜6週間以内の期間発症することで、死亡又はその後のMIのリスクは8〜14%であり、死亡、MI、又は難治性虚血の割合は15〜25%となる(Theroux and Fuster,Circulation 97: 1195−1206 (1998))。米国における急性MIによる死亡例の合計が約600,000例であることを考慮すると、これまでにACSの診断、予後診断、及び管理に関する情報の検索が大規模に行われてきたのは当然である。特定の患者集団においてそのような情報を提供し得る幾つかの有力なマーカーが同定されており、循環心臓トロポニンレベル(例えば、Antman et al., N. Eng. J. Med. 335; 1342−9 (1996);米国特許第6,147,688号、第6,156,521号、第5,947,124号、及び5,795,725号を参照されたい)、ST下降(例えばSavonitto et al., JAMA 281: 707−13 (1999)を参照されたい)、循環クレアチンキナーゼレベル(例えばAlexander et al,, Circulation (Suppl.) 1629 (1998)を参照されたい)、循環c−反応性タンパク質レベル(例えばMorrow et al., J. Am. Coll. Cardiol. 31 : 1460−5 (1998)を参照されたい)、プレ−プロBNP起源のポリペプチドの循環レベル(例えばWiviott SD, de Lemos JA, Morrow DA. Clin Chim Acta. 2004 Aug 16;346(2):119−28を参照されたい)等が挙げられる。] [0004] プロカルシトニン(PCT)は、敗血症診断の確立した生体マーカーであり;PCTは、細菌感染の重症度を反映し、特に、敗血症に至る感染の進行、重度の敗血症、又は敗血症によるショックのモニタリングに使用される。PCTは、全身性炎症応答の活性の測定、治療成果のコントロール、及び予後診断の推定に使用することができる(Assicot M et al: High serum procalcitonin concentrations in patients with sepsis and infection. Lancet 1993, 341:515−8; Clec’h C et al.: Diagnostic and prognostic value of procalcitonin in patients with septic shock. Crit Care Med 2004;32:l 166−9; Lee YJ et al.: Predictive comparisons of procalcitonin (PCT) level, arterial ketone body ratio (AKBR),APACHEIII score and multiple organ dysfunction score (MODS) in systemic inflammatory response syndrome (SIRS), Yonsei Med J 2004, 45, 29−37; Meisner M.: Biomarkers of sepsis: clinically useful? Curr Opin Crit Care 2005, 11, 473−480; Wunder C et al.: AreIL−6, IL−IO and PCT plasma concentrations reliable for outcome prediction in severe sepsis? A comparison with APACHE III andSAPS II. Inflamm Res 2004, 53, 158−163)。敗血症患者におけるPCTレベルの増大は、死亡率と関連する(Oberhoffer M et al.: Outcome prediction by traditional and new markers of inflammation in patients with sepsis. Clin Chem Lab Med 1999;37:363−368)。] [0005] PCTレベルは、不安定性狭心症及び心筋梗塞の患者において、機能的感度が0.3μg/LのPCTアッセイを使用して、定量的に判定されている(Benamer H et al., J Am Coll Card 1997, 31(2) suppl, 451A)。] [0006] 冠状動脈手術後の患者のPCT血中レベルに基づく非感染性SIRSの診断は、Kerbaulらにより記載されている(Brit J Anaesthesia 2004, 93(5), 639−644)。] [0007] US 2004/0253637 A1には、血圧制御に関与するマーカーのレベルと組み合わせた心筋傷害レベルの判定による、対象中の複数の冠動脈疾患の鑑別診断方法が記載されている。] [0008] 肺炎、細菌性髄膜炎及びマラリア等の他の感染性疾患におけるPCTの潜在的な役割を議論する多くの研究が存在する(Bugden SA, Coles C, MillsGD. The potential role of procalcitonin in the emergency department management of febrile young adults during a sustained meningococcal epidemic. Emerg Med Australas 2004, 16, 114−119; Chiwakata CB et al: Procalcitonin as a parameter of disease severity and risk of mortality in patients with Plasmodium falciparum malaria. J Infect Dis 2001, 183, 1161−1164; Schwarz S et al.: Serum procalcitonin levels in bacterial and abacterial meningitis, Crit Care Med 2000, 28, 1828−1832)。] [0009] インビトロでの研究により、PCTが、単球の接着及び移動の過程で重要な役割を果たし、そして更に誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)合成に一定の効果を有することが示された(Linscheid P et al.: Expression and secretion of procalcitonin and calcitonin gene−related peptide by adherent monocytes and by macrophage−activated adipocytes, Crit Care Med 2004, 32, 1715− 1721; Wiedermann FJ et al.: Migration of human monocytes in response to procalcitonin, Crit Care Med, 2002, 30, 11 12−1117; Hoffmann G et al.: Procalcitonin amplifies inducible nitric oxide synthase gene expression and nitric oxide production in vascular smooth muscle cells, Crit Care Med, 2002, 30, 2091−2095.)。] [0010] アテローム性動脈硬化におけるPCTレベルと動脈壁の軽度の炎症との間の関連は、最近になって解析されている。特許出願において、安定性冠動脈疾患(CAD)の患者のリスク階層化においける使用が開示されている。しかしながら、PCTが急性冠症候群(ACS)における診断能力を有するか否かは、現在のところ不明である。] [0011] 急性冠症候群の患者の予後診断におけるB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)及びNT−プロBNPの使用は、様々な研究において実証されている(Mazzone M, Forte P, Portale G, Mancini F, Ursella S, La Sala M, Testa A, Covino M, Pignataro G, Gentiloni Silveri N.Brain natriuretic peptide and acute coronary syndrome.Minerva Med. 2005 Feb;96(l):l l−8. Arakawa N, Nakamura M, Aoki H, Hiramori K. Plasma brain natriuretic peptide concentrations predict survival after acute myocardial infarction. J Am Coll Cardiol. 1996;27: 1656−1661. de Lemos JA, Morrow DA, Bentley JH, et al. The prognostic value of B−type natriuretic peptide in patients with acute coronary syndromes. N Engl J Med. 2001;345:1014−1021. Omland T, Persson A, Ng L, et al. N−terminal pro−B−type natriuretic peptide and long−term mortality in acute coronary syndromes.Circulation. 2002;106;2913−2918.)。] [0012] B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP又はBNP−32)は、心室筋において合成され、心室拡張及び圧負荷に応答して循環系中に放出される、32アミノ酸の神経ホルモンである。心房性ナトリウム利尿ペプチドと同様に、BNPの作用は、ナトリウム利尿、血管拡張、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の阻害、及び交感神経活性の阻害を含む。BNPの前駆体は、108アミノ酸分子として合成され、プレ−プロBNPと呼ばれ、タンパク質分解的プロセシングを受けて、NT−プロBNPと称される76アミノ酸のN末端ペプチド(アミノ酸1〜76)と、BNP又はBNP−32と称される32アミノ酸の成熟ホルモン(アミノ酸77〜108)が生じる。これらのNT−プロBNP、BNP−32、及びプレ−プロBNPのそれぞれは、ヒト血漿中を循環すると考えられている(例えば、Tateyama et al., Biochem. Res. Commun. 185: 760−767 (1992); Hunt et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 214; 1175−1183 (1995)を参照されたい)。BNPのタンパク質分解の結果物として血中に存在する、プレ−プロBNP及びNT−プロBNP、並びにBNP、プレ−プロBNP、及びNT−プロBNPに由来するペプチドは、本明細書中では、一括してプレ−プロBNP起源のポリペプチドと記載される。] 発明が解決しようとする課題 [0013] 急性冠症候群の患者の信頼性の高い予後診断方法及びマーカーの需要が存在する。] 課題を解決するための手段 [0014] 本発明の目的は、急性冠症候群(acute coronary syndrome)の患者をインビトロで予後診断する方法であり、該方法は:該患者から取得した試料中のプロカルシトニン又は長さが12アミノ酸以上、好ましくは50アミノ酸以上、より好ましくは110アミノ酸以上のその断片のレベルを判定し;そして該プロカルシトニン又はその断片のレベルと該急性冠症候群の有害転帰への素因とを関連付けることを含む。] [0015] 急性冠症候群は、急性心筋梗塞に対応するいずれのグループの臨床的症状をも含むものとして使用される包括的用語である。急性心筋梗塞は、環状動脈疾患(冠動脈性心疾患とも称する)に起因する、心筋への血液の供給が不完全であることによる胸部の疼痛である。] [0016] 急性冠症候群は、通常胸部の疼痛及び他の特徴の組合せである一群のサイン及び症状であり、心臓への血流の急激な減少(心虚血)によるものと解釈され;この最も一般的な原因は、冠状動脈上皮に生じるアテローム斑の崩壊である。急性冠症候群のサブタイプとして、不安定性狭心症(UA、心筋ダメージと関連しない)、及び心臓がダメージを受ける2つの形態の心筋梗塞(心臓麻痺)が含まれる。これらのタイプは、心電図(ECG/EKG)の登場に伴い、非ST上昇心筋梗塞(NSTEMI)及びST上昇心筋梗塞(STEMI)と名づけられた。] [0017] ACSは、冠動脈疾患(冠動脈性心疾患とも称する)とは区別されなければならない。冠動脈疾患は、冠動脈のアテローム動脈硬化であり、その動脈が詰まり、及び細くなり、心臓への血流が制限されるが、ACSとは対照的に、心筋への血液の供給は、遮断されない。冠動脈疾患は、安定性狭心症を引き起こし得る。] [0018] ACSは、安定性狭心症と区別されるべきである。安定性狭心症は、労作中に発生して、安静時に消散する。安定性狭心症とは対照的に、不安定性狭心症は、しばしば安静時又は最小限の労作時、又はその個体の以前の狭心症のときよりも軽度の労作時に突然発生する(漸増性狭心症)。また、初発狭心症は、不安定性狭心症と見做される。それは冠動脈の新しい不具合を示すためである。] [0019] 「急性冠疾患」という用語は、様々な血栓性冠動脈疾患を包含し、不安定性狭心症並びにST上昇及び非ST上昇心筋梗塞を含む。診断には、心電図及び慎重な心虚血のサイン及び症状の検討を要する。] [0020] 好ましい態様において、前記有害転帰は、死亡、心不全及び心筋梗塞の群から選択される。] [0021] もう一つの好ましい態様において、前記関連付けの工程は、前記プロカルシトニン又はその断片のレベルと閾値とを比較して、ここで該プロカルシトニン又はその断片のレベルが該閾値を越えている場合に、前記患者は前記有害転機の素因を有する。] [0022] 好ましい態様において、前記閾値は、約0.045(+/−0.01)μg/Lである。この閾値は、本書類の臨床研究から導き出されたもので、調査した患者集団の中間PCT濃度(0.045μg/L)を示し、この値は、有害転帰が生じた患者と有害転帰の無い患者との明確な判別を可能とする(図2のKaplan−Meier−Plotを参照されたい)。] 図2 [0023] 時期閾値のレベル及びマーカーのレベルは、本明細書中の下記実施例でPCT及びNT−プロBNPに関して例示的に記載されるようにして決定される。ここで、一般に、プロカルシトニン単独又は更なる予後マーカーとの組合せが、同一の様式で評価され得る。] [0024] 他の好ましい態様において、前記試料は、血液試料、血清試料、及び血漿試料を含む群から選択される。] [0025] 更なる態様において、急性冠疾患の患者を予後診断する方法は、更に、前記プロカルシトニン又はその断片のレベルと1つ以上の追加的な予後マーカーのレベルとを数学的に組み合わせて、ここで、該プロカルシトニン又はその断片のレベルと該1つ以上の追加的な予後マーカーのレベルとの組合せが、該プロカルシトニン若しくはその断片のレベルの、又は前記関連するマーカーのレベルの、前記有害転帰における診断価値を増大させる。前記数学的組合せは、例えば、プロカルシトニンのレベルが特定の閾値の上又は下のいずれにあるか、及びマーカーX(及びY、Z・・・)のレベルが特定の閾値の上又は下のいずれにあるかに従い、患者をカテゴライズするアルゴリズムが挙げられる。] [0026] 更なる好ましい態様において、前記1つ以上の追加的な予後マーカーは、前記患者から取得した試料中のプレ−プロBNP又はその断片(上記の如く、プロBNP又はその誘導体、即ちBNP又はNT−プロBNP)である。] [0027] 追加的な予後マーカーとして使用され得る更なるマーカーは、トロポニン、ミエロペルオキシダーゼ、CRP、ネオプテリン、GDF−15、ST2、シスタチン−C、並びに成熟ペプチド、前駆体、プロ−ホルモン及び関連するプロホルモン断片の形態の以下のペプチド:心房性ナトリウム利尿ペプチド、アドレノメドゥリン(adrenomedullin)、エンドセリン、バソプレシンを含む群から選択され得る。] [0028] もう一つのより好ましい態様において、前記プレ−プロBNPの断片は、NTプロ−BNPである。] [0029] もう一つのより好ましい態様において、前記プレ−プロBNPの断片は、BNPである。] [0030] 更なるより好ましい態様は、本発明の方法において、更に、前記患者から取得した試料中の1つ以上の追加的な予後マーカーのレベルを判定し、前記プロカルシトニン又はその断片のレベル及び該1つ以上の予後マーカーのレベルの両方を前記有害転帰への素因と組み合わせて、ここで該プロカルシトニン又はその断片のレベルと該1つ以上の予後マーカーのレベルとの組合せが、該プロカルシトニン又はその断片のレベルの前記有害転帰における診断価値を増大させる。] [0031] 更なるより好ましい態様において、前記プロカルシトニン又はその断片のレベルと前記1つ以上の予後マーカーのレベルとの間の組合せは、数学的アルゴリズムを用いて行われる。該数学的組合せは、例えば、プロカルシトニンのレベルが特定の閾値の上又は下のいずれにあるか、及びマーカーX(及びY、Z・・・)のレベルが特定の閾値の上又は下のいずれにあるかに従い、患者をカテゴライズするアルゴリズムが挙げられる。] [0032] 本発明のもう一つの対象は、患者中の急性冠症候群の有害転帰への素因を判定するための、検出感度の下限が<0.045(+/−0.010)μg/Lである、超高感度プロカルシトニンアッセイの使用である。] [0033] 前記超高感度プロカルシトニンアッセイのもう一つの好ましい態様において、該アッセイは、プロカルシトニンの異なる部分に対する2つの抗体を含むサンドイッチアッセイである。] [0034] 前記超高感度プロカルシトニンアッセイのもう一つの好ましい態様において、1つの抗体はプロカルシトニンのカルシトニン部分に対し、そしてもう1つの抗体はプロカルシトニンのカタカルシンに対するモノクローナル抗体である。] 図面の簡単な説明 [0035] 血漿中に放出されたPCTレベルの対数(Log)。転帰:0=無症候生存、1=血管移植患者(冠動脈バイパス又は経皮的インターベンション)、2=心不全を生じた患者、3=死亡した患者。PCTレベルの対数は、ANOVA(分散分析)において顕著に差異があり(P<0.001)、そしてPCTレベルの対数は、群2及び3において、0と比較して顕著に高い(P<0.001、複数の比較においてBoferonni補正を用いた)。] [0036] PCT中間値の下又は上に分類された患者の無症候生存率を示すKaplan Meier曲線(エンドポイントは死亡及び心不全)。中間PCT値は、0.045μg/Lであった。] [0037] PCT(ROC AUC 0.69)及びNTプロBNP(ROC AUC 0.76)を用いた、主要評価項目の死亡又は心不全の予測を示す受信者動作特性曲線。] [0038] PCT中間値の下(図4a)又は上(図4b)、及びNTプロBNP中間値の下又は上に分類された患者の無症候生存率を示すKaplan Meier曲線(エンドポイントは死亡及び心不全)。中間PCT値は0.045μg/Lで、中間NTプロBNPは914pmol/Lであった。] 図4a 図4b [0039] PCT中間値の下(図5a)又は上(図5b)、及びNTプロBNP中間値の下又は上に分類された患者の無症候生存率を示すKaplan Meier曲線(エンドポイントは死亡)。中間PCT値は0.045μg/Lで、中間NTプロBNPは914pmol/Lであった。] 図5a 図5b [0040] Leicester Royal InfirmaryのCoronary Care Unitに入院していた974名の連続的な急性冠症候群(ACS)患者を、本研究に採用した。本研究は、Declaration of Helsinkiの基準に則しており、その地域の倫理委員会に承認されている。患者から書面によるインフォームドコンセントを得ている。20分以上持続する胸部の疼痛、新しい病的なQ波又はST部分及びT波の変化を含む診断用連続心電図(ECG)の変化、並びに正常値の2倍以上の血漿クレアチンキナーゼ−MB上昇又は0.1ng/mlを超える心トロポニンIレベルを示す患者を、ACSと診断した(Alpert JS et al., J Am Coll Cardiol. 2000; 36: 959−969)。ACSを、ST上昇心筋梗塞(STEMI)又は非ST上昇心筋梗塞(NSTEMI)に更にカテゴライズした。本研究から1ヶ月以内の既知の悪性腫瘍又は外科手術を除外基準とした。これらの対象の推定GFR(eGFR)は、最近HFの患者で妥当性が確認された、Modification of Diet in Renal Disease (MDRD)研究(Smilde TD et al.Circulation. 2006; 114 : 1572−80)に由来する単純化した式により計算された。] [0041] 血液使用を胸部疼痛発生の3〜5日後に吸引し、これらの血漿プロカルシトニン(PCT)及びNT−プロBNPのレベルを判定した。床上安静の15分後、EDTA及びアプロチニンを含むチューブに20mlの血液を採取した。全ての血漿を、単一バッチの盲検方式(blinded fashion)のアッセイを行うまで、−70℃で保管した。] [0042] Sonos 5500装置(Philips Medical Systems, Reigate, UK)を用いて、経胸壁心エコー検査を行った。American Society of Echocardiographyの流法に基づく左心壁運動指数(LVWMI)は、16の部分について、LVの各部分を評点(1=正常、2=弱運動(hypokinesis)、3=無動(akinesis)、4=異常運動(dyskinesis)(奇異性運動))し、そしてその合計を評点した部分の個数で割ることにより得られる。左心室駆出分画率(LVEF)は、ディスク式の二次元法(biplane method of discs formula)を使用して計算した(Schiller NB et al. J Am Soc Echocardiogr. 1989; 2: 358−367)。LVの収縮機能の損傷は、EF<40%又はLVWMI>1.8と定義された。] [0043] NT−プロBNPアッセイは、既に公表されているように、非競合的アッセイに基づく(Omland T et al.Circulation. 2002; 106: 2913−2918)。ヒトNT−プロBNPのN末端に対するヒツジ抗体を樹立し、そしてC末端に対して、マウスモノクローナル抗体を樹立した。試料又はNT−プロBNPスタンダードを、C末端IgGでコートしたウェル中で、ビオチン化N−末端抗体と共に、4℃で24時間インキュベーションした。MLXプレートルミノメーター(Dynex Technologies Ltd., Worthing, UK)上で、メチルアクリジニウムエステル(MAE)標識ストレプトアビジンを用いて、検出を行った。検出の下限は、0.3pmol/lであった。心房性ナトリウム利尿ペプチド、BNP、又はC型ナトリウム利尿ペプチドの間で、交差反応は生じなかった。] [0044] プロカルシトニン(PCT)は、Morgenthaler NG et al.: Clin Chem, 2002 May, 48(5), 788−790に記載されるようにして測定された。PCTのカルシトニン部分に対してヒツジ抗体を樹立し、そしてPCTのカタカルシン部分に対してマウスモノクローナル抗体を樹立した。チューブを、抗カタカルシン抗体でコーティングした。前記抗カルシトニン抗体をMACNアクリジニウムエステル(InVent GmbH, Hennigsdorf, Germany)で標識し、トレーサーと見做した。正常ウマ血清中の組換えPCT希釈物を、スタンダードと見做した。100μlの試料又はスタンダードを、前記コーティングしたチューブ中で30分間インキュベートし、200μlのトレーサーを添加した。2時間インキュベーションした後、該チューブを1mlのLIA洗浄溶液で4回洗浄し、そして固定した(bound)。LB952Tルミノメーター(Berthold, Germany)を使用して、化学発光を測定した。] [0045] プロカルシトニン(PCT)及びNTプロBNPの両方のレベルを評価して、主要エンドポイント(死亡又は心不全(HF))の予測を行った。死亡は、個別の第二のエンドポイント(individual secondary endpoint)としても調査された。HFによる入院は、HFが主要な理由である再入院と定義された。エンドポイントは、Office of National Statistics Registryを参照し、各患者と接触することにより得られた。全ての生存患者について、最低6ヶ月のフォローアップを行った。] [0046] 統計解析は、SPSSVersion 14(SPSS Inc, Chicago, Illinois)上で行った。前記2つの独立した群における連続型変数(continuous variable)を、Mann WhitneyU検定を用いて比較した。Spearman相関が行われた。各ペプチドレベルの死亡又はHFに対する予測性能を試験するために、Cox比例ハザードモデル及びKaplan Meierモデルが採用された。NT−プロBNP及びPCTのレベルは、対数変換により正規化された。故に、ハザード比は、これらのマーカーのレベルが10倍増加することを示した。Coxモデルは、常に同時に入る同一の変数(P<0.10での単変量解析において統計的に有意な変数を含む)を使用して構成された。] [0047] NT−プロBNP及びPCTのマーカーとしての精度を比較するために、受信者動作特性(ROC)曲線が作成され、該曲線の下部の面積(AUC)が計算された。両側P値(two tailed P value)が0.05未満であれば、統計的に有意と見做された。] [0048] 患者集団の人口統計学的特徴を、表1に示す。フォローアップの期間の中間値は660日で、0〜2837日の範囲に及ぶ。フォローアップに失敗した患者はおらず、生存のフォローアップの最短期間は187日(約6ヶ月)であった。フォローアップの間、200名(20.5%)の患者が死亡し、82名(8.4%)が心不全で再入院した。779名のSTEMI患者がおり、その68%が血栓溶解治療を受けていた。] [0049] ] [0050] PCTレベル(単変量解析) ACSの患者974名の退院前(predischarge)(3〜5日)に取得した血漿中PCTレベルは、正常範囲と比較して上昇していた(表2)。正常個体の中間PCT値は、0.0127μg/1であった(Morgenthaler NG et al.: Detection of procalcitonin (PCT) in healthy controls and patients with local infection by a sensitiveILMA. Clin Lab. 2002, 48, (5−6), 263−270)。男性患者のPCTレベルは、女性の場合と比較して低かった(表2)。急性心筋梗塞(AMI)、高血圧、糖尿病又は心不全(HF)の病歴がある患者のPCTレベルは、そのような病歴の無い患者と比較して高かった。PCTのレベルは、他の部位の梗塞のものと前壁心筋梗塞のものとが類似しており、又はNSTEMIのものとSTEMIのものとが類似していた(表2)。Killip分類が1より高い(左室収縮能の低下の発生を示す)ものにおいてPCTレベルの上昇が見られ、これは、心エコー検査により収縮機能障害の兆候が認められた患者においてPCTレベルの亢進が見出されたことにより確認された(表2)。] [0051] エンドポイントにおいて、PCTは、無症候生存した患者と比較して、死亡した又はHFが発症した患者において増大していた(表2)。また、PCTは、死亡のみ、又は心不全のみの、個別の第二のエンドポイントの患者においても増大していた(表2、図1)。] 図1 [0052] 血漿PCTは、年齢、eGFR、Killip分類(表3)及びNT−プロBNPと関連付けられた(r=0.36、P<0.0005)。] [0053] ] [0054] ] [0055] ] [0056] NT−プロBNPレベル(単変量解析) 退院前のフェーズ(3〜5日)で取得した血漿NT−プロBNPは、無症候生存の患者と比較して、死亡又はHFにより再入院した患者において、顕著に高かった(表2)。男性と女性との間で、Killip分類が1を超える患者において、そして心不全、高血圧、心筋梗塞又は糖尿病の病歴がある患者において、NT−プロBNPレベルの顕著な差異が注目された(表2)。また、NT−プロBNPのレベルは、NSTEMI患者よりもSTEMI患者において高かったが、前部AMIの患者においてはそのようにならなかった。血漿NT−プロBNPは、年齢、eGFR、Killip分類と関連付けられた(表2)。] [0057] 主要エンドポイント:死亡及び心不全の予測因子としてのPCT及びNT−プロBNP 死亡又はHFの単変量予測因子は、表3に報告されている。PCT(0.69[95%信頼区間CI:0.65−0.73])及びNT−プロBNP(0.76 [95%CI:0.72−0.79])の受信者動作特性曲線の下部面積(AUC ROC)は、同程度であった。] [0058] 有意(P<0.10まで)であった単変量予測因子を使用するCox比例ハザードモデルにより、NT−プロBNP、PCT、年齢、eGFR及びAMIの病歴が、死亡又は心不全の独立した及び/又は追加的な予測因子となることが明らかになった(表3)。Killip分類、血栓溶解剤の使用、心不全の病歴、高血圧又は糖尿病のいずれも、独立した予測因子ではなかった。] [0059] 中間PCT(0.045μg/L)より下又は上の無症候生存を描画するKalpan−Meier生存曲線は、中間PCTレベルを上回る患者が、中間PCTを下回る患者と比較して予後が悪いことを示す(図2(ログランク、P<0.001))。該中間PCTより下又は上の無症候生存を描画するKalpan−Meier生存曲線は、NT−プロBNPの中間値より下及び上の両方において、中間PCTレベルを上回る患者が、中間PCTを下回る患者と比較して予後が悪いことを示す(図4、中間NT−プロBNPレベルを下回る患者においてはP<0.009(ログランク検定を使用)、中間NT−プロBNPレベルを上回る患者においてはP<0.001(ログランク検定を使用))。] 図2 図4 [0060] 第二のエンドポイント:死亡の予測因子としてのPCT及びNT−プロBNP PCT及びNT−プロBNPは、無症候性損の患者と比較して、死亡した患者において、顕著に高かった(表2)。Cox比例ハザードモデルは、同一の変数(PCT、NT−プロBNP、年齢及びAMIの病歴)が、死亡の独立した予測因子であることを示していた。Kaplan−Meier解析により、NT−プロBNP中間値により階層化された両方のグループにおいて、前記PCTレベルが前記中間値を下回る患者の死亡率が低いことが確認された(中間NT−プロBNPレベルを下回る患者においてはP<0.01(ログランク検定を使用)、中間NT−プロBNPレベルを上回る患者においてはP<0.001(ログランク検定を使用))。] [0061] ]
权利要求:
請求項1 急性冠症候群(acutecoronarysyndrome)の患者をインビトロで予後診断する方法であり:該患者から取得した試料中のプロカルシトニン又は長さが12アミノ酸以上のその断片のレベルを判定し;そして該プロカルシトニン又はその断片のレベルと該急性冠症候群の有害転帰への素因とを関連付けることを含む、前記予後診断方法。 請求項2 前記有害転帰が、死亡、心不全及び心筋梗塞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。 請求項3 前記関連付けの工程が、前記プロカルシトニン又はその断片のレベルと閾値とを比較して、ここで該プロカルシトニン又はその断片のレベルが該閾値を越えている場合に、前記患者が有害転帰の素因を有すると判断することを含む、請求項1又は2に記載の方法。 請求項4 前記閾値が、約0.045(+/−0.010)μg/Lである、請求項3に記載の方法。 請求項5 前記試料が、血液試料、血清試料、及び血漿試料を含む群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 請求項6 更に、前記プロカルシトニン又はその断片のレベルと、1つ以上の追加的な予後マーカーのレベルとを関連付けて、ここで該プロカルシトニン又はその断片のレベルと該追加的な予後マーカーのレベルとの組合せが、該プロカルシトニン若しくはその断片のレベルの、又は前記関連するマーカーのレベルの、前記有害転帰における診断価値を増大させることを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 請求項7 前記予後マーカーの1つが、前記患者から取得したプレ−プロBNP又はその断片である、請求項6に記載の方法。 請求項8 前記プレ−プロBNPの断片が、NTプロ−BNP又はBNPである、請求項6又は7に記載の方法。 請求項9 更に、前記患者から取得した試料中の1つ以上の追加的な予後マーカーのレベルを判定し、そして前記プロカルシトニン又はその断片のレベル及び該1つ以上の追加的な予後マーカーのレベルの両方と前記有害転帰への素因を関連付け、ここで該プロカルシトニン又はその断片のレベルと該1つ以上の追加的な予後マーカーのレベルとの組合せが、該プロカルシトニン若しくはその断片のレベルの該有害転帰における診断価値を増大させることを含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。 請求項10 前記追加的な予後マーカーが、トロポニン、ミエロペルオキシダーゼ、CRP、ネオプテリン、GDF−15、ST2、シスタチンC、並びに成熟ペプチド、前駆体、プロ−ホルモン及び関連するプロホルモン断片の形態の以下のペプチド:ナトリウム利尿ペプチド、アドレノメドゥリン(adrenomedullin)、エンドセリン、バソプレシンからなる群から選択される、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。 請求項11 前記プロカルシトニン又はその断片のレベルと前記1つ以上の追加的な予後マーカーのレベルとの関連付けが、数学的アルゴリズムを用いて行われる、請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。 請求項12 患者中の急性冠症候群の有害転帰への素因を判定するための、検出感度の下限が<0.045(+/−0.010)μg/Lである、超高感度プロカルシトニンアッセイの使用。 請求項13 前記アッセイが、プロカルシトニンの異なる部分に対する2つの抗体を含むサンドイッチアッセイである、請求項12に記載に記載の超高感度プロカルシトニンアッセイの使用。 請求項14 1つの抗体がプロカルシトニンのカルシトニン部分に対し、そしてもう1つの抗体がプロカルシトニンのカタカルシンに対するモノクローナル抗体である、請求項12又は13に記載の超高感度プロカルシトニンアッセイの使用。
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